日本のアニメーターの賃金はなぜ安いのか?その仕組みについて分かりやすく解説!

アニメーター 賃金 仕組み

こんにちはRyoです。

今回は、日本のアニメーターの賃金やアニメ業界の仕組みについて解説していきます。

アニメ業界は2005年から2019年まで市場が拡大していき、市場規模は約2700億円(事業者売上高ベース)まで大きく成長しました。

2020年にコロナウイルスの蔓延に伴う制作遅延や本数減少で少し市場が縮小しましたが、それでも約2600億円(事業者売上高ベース)と大きな存在感を放っています。

しかし、市場が拡大していても制作しているアニメーターの方々の賃金は低所得だと問題視してることが話題になっています。具体的な問題について探っていきましょう。

アニメーターとは

そもそもアニメーターとはどういう職業なのでしょうか。アニメーターとは、アニメーション制作工程の中で「作画」を主に担当する人を指します

アニメーターの仕事は、大きく2つに分けることができ、動画を描く「動画マン」という仕事と原画を描く「原画マン」があります。

アニメーションでポイントになる絵を原画と呼び、動画は原画と原画をつないで滑らかな動きをつけることを言います。

新人アニメーターは動画マンから入ることが多く、動画マンを通し仕事を経験して作画監督になるキャリアが多いです。

「動画マン」「原画マン」と2つの職業が出てきました。ここからは2つの職業の具体的なスキルや年収について見ていきましょう。

アニメーターとしてキャリアを積み、イラストレーターになった「米山舞」さんの記事

動画マン

動画マンとは、冒頭でも触れましたが原画と原画をつないで滑らかな動きをつける「中割り」という工程を行う仕です。

アニメーションは何千枚、何万枚の絵が必要なので、アニメ制作において非常に重要な役割を持っています。

必要なスキルは、対象物の動きを正確に把握する「立体把握能力」やそれを組み上げる「構成力」が必要となってきます。

年収に関しては日本アニメーター・演出協会(JAniCA)が出した「アニメ-ション制作者実態調査報告書2015」では職種別平均年収で平均111万円という金額が記載されており、かなり低いことがわかります。

また、「アニメーター実態調査2019」では平均年収125万円と記載があり、賃金はあまり上がっていませんでした。

原画マン

原画マンはアニメーションで見せ場となる場面を担当する仕事です。

動画マンで経験を積んだ方が、ステップアップしてできるという特徴があり、新人よりベテランの方々が担当していることが多いです。

必要なスキルとしては、「デッサン力」や「構成力」をはじめとする総合的なスキルが必要となり、非常に難しい役割です。

年収については「アニメ-ション制作者実態調査報告書2015」で平均年収281万円と記載されており、「アニメーター実態調査2019」では平均年収334万円となっています。

ここまで2つの職業について解説してきました。次にアニメーターの賃金が安い仕組みについて紹介していきます。

引用:アニメ-ション制作者実態調査報告書2015

引用:アニメーター実態調査2019

アニメーターの賃金が安い仕組み

アニメーターの賃金が安い理由を知るためにはまず初めにアニメ業界のビジネスモデルを知る必要性があります。

アニメビジネスは下記の3つのステップです。

アニメビジネスの3ステップ

1.原作・企画の開発

2.映像の制作

3.放映権・版権の販売

アニメーションで売り上げを何かと聞かれるとテレビや動画サービスなどで放映される放映権のイメージがあります。

しかし、利益率が実際に高いのはグッズやゲーム、ビデオなどの2次利用の版件(ライセンス)の販売です。

東映アニメーションの決算資料を参考にすると営業利益の約7割が版権ビジネスの売上ということがわかりました。

版権ビジネスは、すでに制作されたアニメのIPを販売するので、過去作であってもヒットすれば長く収益を得ることができるのです。

だが、こうした版権ビジネスはアニメ制作会社が全てできる訳ではありません。理由は、アニメビジネスの3ステップを別々の会社で行うことが多いためです。

1.原作・企画の開発

2.映像の制作

3.放映権・版権の販売

製作委員会とは、玩具メーカーやビデオメーカー、広告代理店など企業が出資して、作品の権利を共同で保有する仕組みのことを指します。

アニメ制作会社も出資することができますが、資金的余裕が無く入ることが多いのが現状です。

つまり、利益率が高い版権ビジネスは出資額に応じて報酬が渡されますが、アニメ制作会社は資本が無いため、あまり出資できず報酬をもらえないということです

その結果、アニメ制作会社で働くアニメーター達の賃金が低くなるという仕組みなのです。

日本のアニメーターの賃金が低いことについて解説してきました。次に海外のアニメーターとの年収はどれほど違うのかを見ていきましょう。

海外アニメーターの平均年収と比較

海外のアニメーターの賃金は、日本のアニメーターに比べて高い傾向にあります。

米国の有名なアニメ制作会社ディズニーは「原作・企画の開発」「映像の制作」「放映権・版権の販売」の全工程を自社で一貫して行っています。

アメリカのアニメーターの平均年収が816万円と記載しており、日本のアニメーター平均年収440万円に比べると約2倍以上の差があることがわかります。

引用:NewSphere(日本のアニメーターの低賃金に海外衝撃 「夢の職業」の実態を米紙が特集)

アニメーターの労働環境の改善

ここまで、アニメーターの賃金が低いことについて話してきましたが昨今アニメーターの労働環境の改善を見直そうする会社が増えてきました。

「IGポート」や「ツインエンジン」などの会社が、原作や版権の販売を行うことで収益率をあげようと努力しており、特にツインエンジンは従来のビジネスモデルから脱却する試みもしています。

このきっかけを作ったのがNetflixです。Netflixというグローバル配信サービスができたことにより制作委員会を通さずに作品を売り込める流れを作ることができました。

今後は、制作委員会を通さないで直接アニメーションを売り込む企業が増えて、アニメーターの賃金も改善していくと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は日本のアニメーターの賃金やアニメ業界の仕組みについて解説してきました。

まだまだ、改善する点が多くアニメーターの賃金問題は今後も課題になっていくことではありますが、従来のビジネスモデルから脱却し新しいビジネスモデルに切り替わることで少しずつですが改善していくと思います。

日本のアニメ業界についても今後もチェックしていきましょう。